自治体職員の負担をAIで削減。専門知識を「誰もが扱える情報」に変える挑戦

中電技術コンサルタント株式会社
川野 様
藤原 様
主に自治体様向けに土砂災害などの防災情報システムを展開する中電技術コンサルタント株式会社様。専門的な情報を扱うがゆえに生じる「用語の難しさ」や「自治体職員様の対応負担」が課題となる中、同社は生成AI活用による解決策を模索していました。「誰もが扱える情報」への転換を目指し、ハルシネーション(誤回答)対策を徹底したAIチャットボット導入プロジェクト。その始動の背景にはどのような狙いがあったのでしょうか。プロジェクトを推進された川野様・藤原様に、開発を伴走した株式会社アップグレードの舟根・相澤が、実装の裏側から「能動的な防災システム」という未来の展望までを伺いました。
自治体担当者の負担軽減を目指した始動

舟根:本日はよろしくお願いいたします。まずは、今回の生成AI活用プロジェクトが始まった背景について詳しくお聞かせください。
川野氏:弊社は自治体様向けに土砂災害などの防災情報を提供するシステムを展開しています。非常に多くの方にご利用いただいていますが、扱う情報が専門的で多岐にわたるため、用語が分かりにくいという課題と操作が難しいという課題を抱えていました。
舟根:ありがとうございます。おっしゃっていただいた災害情報については、専門性が高いかつ複雑になりやすいのかなと思いますが、難しさについては、現場ではどのような課題があったのか具体的にお話ししていただいてもよろしいでしょうか。
藤原氏:実際には、住民の方から問い合わせを受ける自治体の職員様にとって、専門的な内容を即座に正確に説明するのは大きな負担になっていました。具体的な内容を説明する際も、人数も限られていて、時間的なコストがかかります。また、職員様自身もすべての情報を把握しているわけではないため、専門情報の伝達スピードと正確性というところで課題を感じていました。それを解決するために、昨今進化が目覚ましい生成AIを活用した、新しい機能やコンテンツを生み出したいのが始まりでした。
実績とスピード。伴走パートナーにアップグレードを選んだ理由

舟根:多くのAIベンダーがある中で、今回弊社をパートナーにお選びいただいた決め手は何だったのでしょうか。
川野氏:軸は2つありました。1つ目は生成AIを活用したコンテンツの実装実績です。私どもとしても、コンテンツを導入したいという気持ちはあるのですが、お客様への導入実績があまりないといったところもあり、既に実績があるパートナーを選びたいというのがありました。2つ目は限られた期間で動くものを作り切る力です。自治体様にご確認いただく際には、実際に動作するものを見ていただかないといけません。どうしても書面だけでの説明だけだと、実際の機能の利便性や価値というものが伝わりにくいので、限られた期間の中で動くものを作り切れるパートナーと選んだところであります。
舟根:そういった意味で、実績や提案の具体性、短期間で「動くもの」を作り切れそうという点で弊社を評価いただいたということでしょうか。
川野氏:はい、その通りでございます。
命に関わる情報を扱うための、ハルシネーション対策と実装

相澤:実装面について伺わせてください。今回は国のマニュアルやガイドラインといった膨大なデータを参照して回答するAIチャットボットを導入しましたが、どのような機能を重要視されていたのかお聞きしたいです。
川野氏:一つの機能を作り切った後に、色々な自治体様向けにも拡張できるかどうかという点を考慮しておりました。
ハルシネーションを徹底的に排除することも最優先事項としてありました。防災という命に関わる情報を扱う以上、間違った回答は許されませんので、膨大な情報から正確に引用しつつ、誰にでも使いやすいチャットボット形式でアウトプットすることにこだわりました。
また、安定して動くかどうかと言うところもポイントになりました。
相澤:確かに今回は自治体担当者向けのデモを想定した試行開発でしたが、安定性と正確性の両立は最も苦心した部分です。実際に触ってみての手応えはいかがでしたか?
藤原氏:マップの使い方や専門用語など、これまでマニュアルをひっくり返して探していた情報が即座に返ってきたことに衝撃を覚えました。今回のプロジェクトにより基盤ができたことは、今後の横展開を考える上でも非常に大きな一歩になりました。
「受動」から「能動」へ。AIが変える防災システムの未来

舟根:今回のチャットボット構築の先にどのような展望を描いていらっしゃいますか。
川野氏:現状のシステムは利用者が自ら情報を探しに行く型が主流です。しかし今後はAIが状況を判断し、システム側から住民の方へ能動的に通知を行うような高度な連携を目指したいと考えています。
藤原氏:生成AIの強みを活かすことで住民一人ひとりの状況に合わせた防災アクションを促せるようになるはずです。今回のプロジェクトはそのための重要な土台になると確信しています。
食わず嫌いを捨て、小さな成功を積み重ねる
舟根: 最後に、AI導入を検討している企業のご担当者様へメッセージをお願いします。
川野氏:社内でも色々な意見が出るかと思いますが、まずは食わず嫌いをせずに小さなところから始めてみることが大切です。実際に動くものを作ってみて、成果を確認しながら拡張していく。このプロセスこそが、自社が持つ情報の価値を最大化させる唯一の道だと思います。
藤原氏:やってみないと始まらないというのが、今回のプロジェクトを通じて得た一番の教訓かもしれません。一歩踏み出すことで、専門的なシステムとAIの融合がもたらす可能性をぜひ体感してほしいですね。